ウォルター・ヴァン・ベイレンドンクとは?アントワープの6人、W&LTとパクパク君、今も続く唯一無二の世界

ウォルター・ヴァン・ベイレンドンクの回顧展「Dream the World Awake」の展示風景 WALTER VAN BEIRENDONCK
Photo: Rosa Menkman / CC BY 2.0 / Wikimedia Commons

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派手な色、宇宙人やモンスターのようなキャラクター、そして服に書かれたメッセージ。一度見たら忘れられない服を、40年以上作り続けているデザイナーがいます。ベルギーのWalter Van Beirendonck(ウォルター・ヴァン・ベイレンドンク)です。

古着好きの間では、90年代のライン「W&LT」と、そこに登場する大きな口のキャラクター「パクパク君」でも知られています。じつは僕がウォルターの中でいちばん好きなのも、このパクパク君です。この記事では、ウォルターの歩みとW&LT、そしてパクパク君の魅力をまとめました。

ウォルター・ヴァン・ベイレンドンクとは

1957年、ベルギー生まれ。もともとは画家を目指してアントワープ王立芸術アカデミーに入学しましたが、学校のファッションショーに心をつかまれ、ファッションの道に進んだといわれています。1980年に同アカデミーを卒業し、1983年から自身のコレクションを発表し始めました。

ポップでカラフルな色づかい、コミックやキャラクター、SFの世界観。そこに、エコロジーや性の多様性、戦争への反対といった社会へのメッセージを込めるのが、ウォルターの服の大きな特徴です。

車の修理工場で育った少年時代や、デヴィッド・ボウイへの憧れ、MUSTANGとの裁判まで、ウォルター本人の生い立ちは、こちらの記事でくわしくまとめています。

ウォルター・ヴァン・ベイレンドンクの生い立ち|車の修理工場の少年が「アントワープの6人」になるまで
ウォルター・ヴァン・ベイレンドンクの生い立ちをたどる。車の修理工場で育った少年時代、デヴィッド・ボウイへの憧れ、パートナーのダーク・ヴァン・セーヌ、W&LTとMUSTANGとの裁判、教育者としての顔まで。

「アントワープの6人」のひとり

1986年、アントワープ王立芸術アカデミー出身の6人の若手デザイナーが、ロンドンでそろってコレクションを発表し、高い評価を受けました。のちに「アントワープの6人(Antwerp Six)」と呼ばれる、ベルギーファッションの伝説的なグループです。

  • ウォルター・ヴァン・ベイレンドンク
  • ドリス・ヴァン・ノッテン
  • アン・ドゥムルメステール
  • ダーク・ビッケンバーグ
  • ダーク・ヴァン・セーヌ
  • マリナ・イー

ドリス・ヴァン・ノッテンが2024年に自身のブランドを離れるなど、メンバーの活動のかたちが変わっていく中で、今も自分の名前のブランドで精力的にコレクションを発表し続けているのがウォルターです。

アントワープの6人について、メンバー全員のブランドや歴史は、こちらの記事でまとめています。

アントワープの6人とは?メンバー6人のブランドと歴史、40周年の展覧会まで【Antwerp Six】
アントワープの6人(Antwerp Six)とは?ドリス・ヴァン・ノッテン、アン・ドゥムルメステール、ウォルター・ヴァン・ベイレンドンクらメンバー6人のブランドと1986年のロンドン、マルジェラとの関係、MoMuの40周年展覧会までまとめました。

W&LT(Wild & Lethal Trash)の時代

1993年から1999年まで、ウォルターはドイツのジーンズメーカー「MUSTANG」と組んで、W&LT(ワイルド・アンド・リーサル・トラッシュ)というラインを手がけました。若い世代に向けた、カラフルでハイテクなライン。ネオプレンやリフレクター素材のような新しい素材を使い、エコロジーやHIVといったテーマをスローガンにして服に描きました。

ショーは、近未来のパーティーのような演出で、体型もさまざまなモデルが歩くものでした。ウォルター本人も、W&LTがいちばん熱狂的に受け入れられたのは日本だったと振り返っています。今も日本の古着市場でW&LTが人気なのは、そのころの熱気が残っているからなのかもしれません。

シーズンタイトルポイント
1995-96年秋冬Paradise Pleasure Productionsラテックスのボディスーツで、セーファーセックスを訴えた
1996年春夏Killer / Astral Travel / 4D-Hi-D「アルプスの少女ハイジ」をダークに描き直したシーズン
1996-97年秋冬Wonderland「Kiss the Future」のスローガンが登場
1997年春夏Welcome Little Stranger宇宙人のキャラクターとともに、パクパク君(Puk Puk)が登場
1997-98年秋冬Avatar—

パクパク君(Puk Puk)とは

パクパク君は、W&LTに登場するキャラクターです。英語では「Puk Puk」と呼ばれていて、ギザギザの歯がならんだ大きな口と、ひょこっと伸びた触角が目印。日本では、その大きな口から「パクパク君」と呼ばれて親しまれています。

Tシャツやロンティー、ジャージだけでなく、パクパク君が頭の上に乗ったパペットのようなニット帽や、バッグ、スリッパまで、さまざまなアイテムになりました。

僕がパクパク君を好きなのは、かわいいのに、ちょっと不気味なところです。大きく開いた口には、遊び心と毒っ気が同時につまっていて、ただのマスコットでは終わらない。90年代のW&LTが持っていた、明るくて、でもどこか危うい空気が、このキャラクター1体にぎゅっと詰まっているように感じます。

そして2026年、パクパク君はアントワープのモード美術館の展覧会で、なんと高さ3メートルのロボットになってよみがえりました。

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当時のパクパク君のアイテムは、今も古着で見つかります。

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U2のツアー衣装も手がけた

1997年には、ロックバンドU2のワールドツアー「PopMart Tour」の衣装をデザインしました。ポップでSF的なウォルターの世界観は、ステージの上でもひときわ映えるものでした。

アントワープの教育者として

ウォルターは、デザイナーであると同時に、すぐれた教育者でもあります。1985年から母校のアントワープ王立芸術アカデミーで教え始め、2007年から2022年まではファッション学科のトップとして、多くのデザイナーを育てました。ラフ・シモンズやベルンハルト・ウィルヘルムも、ウォルターのもとで研修やアシスタントを経験したデザイナーです。

アカデミーを退いたあとも、イタリア・フィレンツェのファッションスクール「ポリモーダ」で、若い世代の指導を続けています。

いまのウォルター・ヴァン・ベイレンドンク

ウォルターは今もパリでメンズコレクションを発表し続けています。2026-27年秋冬のテーマは「SCARECROW(かかし)」。Eastpakとのコラボレーションなど、新しい挑戦も続いています。過去の作品の焼き直しをせず、毎シーズン新しい世界を見せ続けているところも、ウォルターのすごさだと僕は思います。

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日本では、大阪の「Why are you here?」や、札幌の「UNION」などで現行のコレクションを取り扱っています。

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W&LTやパクパク君のアイテムはどこで買う?

W&LTは1999年に終わったラインなので、今手に入れるには古着を探すことになります。いちばん出会いが多いのは、メルカリなどのフリマアプリです。

実物を見て選びたい人は、W&LTのアーカイブを扱う古着屋もおすすめです。たとえば原宿の「サントニブンノイチ」では、W&LTのアイテムがInstagramで紹介されています。

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古着を買うときの注意点や、偽物を避けるコツは、こちらの記事でまとめています。

アーカイブ古着の買い方|メルカリで偽物を避けるコツと、おすすめの買う場所
アーカイブ古着はどこで買うのが正解?メルカリ・リユースショップ・古着屋のそれぞれの特徴と、偽物が多い今だからこそ大切な「知識・鑑定・信頼できるルート」の3つの守りを、実際にアーカイブを集めてきた目線でまとめました。

まとめ

アントワープの6人として世に出て、W&LTで90年代を彩り、教育者として次の世代を育て、そして今も新しい服を作り続ける。ウォルター・ヴァン・ベイレンドンクは、ずっと「未来」を向き続けているデザイナーです。

その入り口として、まずはパクパク君から。かわいくて、ちょっと不気味なあの大きな口に、きっとハマってしまうと思います。

アイキャッチ画像:Rosa Menkman(CC BY 2.0)/Wikimedia Commons

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